・木綿反物の水通し
当店でお買い上げ頂いた木綿の反物の水通しは全て私がやっています。
木綿はご存知の通り、洗うと縮みが出ます。
1年ほど前までは業者さんに出していましたが、業者さんに依頼した着物を自分が毎日のように着用していると、1回目の洗濯でかなり縮む感じがしていました。
実はこの1回目の洗濯というのが「みそ」で。
業者さんに依頼すると確かに綺麗に布目が揃って出来上がって来るのですが、
木綿の風合いと言うのは毎日の様に着ていると、どんどん柔らかくなって木綿特有の
「ぬくもり感」や「着こなし感」が出てきます。
そしてなにより、「シワが気にならなくなります」
今まで多くのお客様に木綿をお勧めしてきたのですが、
お買い上げ頂けない理由の一番に「木綿はシワが気になるので・・」と言われてきました。
私は自分が着ているので、「何度も着て洗うとそのうちシワも気にならないようになりますよ」とお勧めしてきたのですが、確かに新品に近い状態ではシワも気になりました。
なにより、1回目の洗濯でかなり縮むのはなぜ?
どうせ家庭で何回も洗うのですから、一度自分が着るために作る木綿の反物を自分で洗ってみることにしました。
すると・・
水につけて「ビックリ!」
なんと水を弾いている感じでなかなか浸透していきません。
ましてや反物の長さは13m近くあるので、折り畳んだ状態で完全に中まで浸透させるには、揉みながら洗うほかありません。
初めは、とにかく水が浸透するまで手で揉みながらやってましたので結構な時間が掛かってしまいました。
そのうち、自分自身も木綿が好きになってきたので、木綿の産地や実際に織り元さんの所に伺う機会が増え、その中での会話でわかったことがありました。
木綿の糸を織る際に、織り方や織機にもよりますが糸に加工をして織らないと木綿は滑らないので織り傷や糸が切れてしまうということがわかりました。
加工と言っても、要は滑りを良くする為に油剤をつける感じです。
そこでお聞きしたところ、お湯で洗うと良いよ!と言われました。
で、お湯で揉み洗いしたところ、半分以下の時間で浸透し、しかも洗った水が商品によってはどんどん濁っていきます。
濁ると言っても染料が抜けるような濁りではなく、黄ばみと言うか不純物が出てきたって感じです。
画像でお分かりかと思います。しっかり揉み洗いをすると濁ってきます。
2回ほどすすぎ、今度は半日ほど放置してみました。
後から分かったのですが、放置の時間も浸透させて木綿が水を吸い切るのを待つのが目的なので、今では3時間ほどでも十分だとわかっています。
その後、軽めの脱水を掛け、室内で影干しします。
ある程度乾いたら、布目を揃えるように丁寧にアイロンがけをして、裁断し、お仕立に出します。
では、上記の様にすると、どのくらい縮むかと言うと、
もちろん商品によってかなりの違いは出るものの、
今回は例として当店の遠州木綿でしっかりと測ってみました。
この画像は横幅なので、たったの「3mm」しか縮みは出ていませんが、
長さは
「14m」の反物で
水通し後は
「13m」になりました。
約8%近く縮みました。
これを、もし新品の状態で仕立てたとすると、
身丈が4尺0寸0分(約151cm)の方は、3尺7寸0分(約140cm)になり、
3寸(約11cm)も縮むことになってしまいます。
私は男なので、男物の着物はご存知の様におはしょりをとらない「対丈」で着ます。
横方向に縮むよりも縦方向の縮みがかなり気になったので、今では確信を持って水洗いをしています。
私が水通しをする理由は、お仕立てをする前に
「前もってある程度縮めてしまえ」
という事です!
ここまでは、当店での水洗いを紹介しましたが、
皆さんのお手元に着いてからのお手入れ方法でも相当な縮みの差が出てしまいます。
一番、まずいのは、洗った後、温風乾燥などで乾燥機を掛けて乾燥させる方法です。
洗った直後では完全に水を吸っていますので、布目は物凄く詰まっています。
徐々に乾燥させないと、布目が膨らまない内に乾燥してしまい、物凄く縮んでしまいますし、風合いも悪くなります。
なにより、完全に乾燥させてしまい、回転によって布自体が擦れてしまうので痛みも早くなります。
後、お洗濯の後に脱水を掛けないまま放置してしまうと、
シワもさることながら、偏って乾燥してしまい布目も揃わないので着物の形も崩れてしまいます。
もちろん洗い直せば直りますのでそういった場合はもう一度、水に通して下さい。
一番ベストなのは、一番汚れる衿元や袖口、裾周り、目だったシミが付いている場所に
あらかじめ、薄めた洗剤をタオルにたっぷりと含ませ、叩くように汚れを取ってから、
着物畳みに畳んでネットに入れてたらいなどに水を入れ押し洗いをしてください。
洗濯機でももちろんOKです(私はめんどくさがりなので洗濯機で洗っています)、
手洗いモードやお洒落着洗いモードなどで洗って下さい。
その際には着物にしっかりと水を浸透させてから洗濯機を回してください。
水がしたたり落ちない程度で脱水は止めて、出来れば風通しの良いところで影干ししてください。
間違っても着物は天日干しをしないで下さい。
最後におことわり。。産地の違いや同じ商品によっても差は出ることをご承知おきください。経験でかなり分かってきましたが、木綿の性質上、完全に縮みを防ぐことは出来ません。また説明どおり、洗った後の乾燥方法や季節によってもずいぶん変わることがあります。この方法が絶対間違いないと言うことではないことを前提にお考え下さると幸いです。