滋賀県近江上布の里へ

昨日、今月当初東京でお会いした滋賀県の織物メーカー「大西新之助商店」さんへお邪魔してきました。

着物屋仲間の埼玉の「きものこすぎ」さんと島根県の「馬庭呉服店」さんにもお声をかけて一緒に。

東京での大西さんのお話が私に取って共感出来る部分が多々あり、いても立ってもいられずって感じの突撃訪問です(笑

近江は昔から麻織物で有名です。お話を聞くと戦前までは近江で麻も栽培して地元ですべてまかなっていたとの事。

いまでは機屋も減り、近江上布と呼ばれる物はほとんど生産していないのが現状とのことや、新之助上布商店さんは小売りもやっておられるので小売店の感度に近い考え方をお持ちで、3名とも共感出来る部分や勉強になる部分が多々ありました。

なんと言ってもビックリしたのは、大西さんご自身が伝統工芸士なのですが、糸染めから織りまですべて一人でやりきる事です。
分業制のこの業界で異彩を放ちます。しかし、その裏返しに地元ではほとんど担い手がいないのもその影響とか。


明るく言い放つ言葉の裏には歴史の重みと何より苦労がにじみ出ていました。

借金が怖くて上布が織れるか!(笑えるのかどうかw

ストイックなまでの物作りに対する姿勢は金銭で賄える部分だけではないと言う事でしょう。

現実、糸作りから織りまでほぼ一人でやっているので、年間生産量は機械機の反物が「100から200反」、手織りの物にいたると年間「6反」ほどだそうです。

最近、こちらの新之助上布を当店のお客様が反物をお持ちになりお仕立てを当店が何反もお受けした経験から、小千谷に並ぶ、麻織物としていずれ当店でも扱いたいと思っていた物ですから、社長にお願いして即決で扱わさせて頂く事に。


皆さん、おそらく来年の春には新之助上布が当店の店頭に並ぶと思いますので愛知県近隣の皆様、楽しみにしていてくださいね!


最後に。。私は色々な産地を回らせて頂きましたが着物の産地が抱えている問題は日本全国どこでも同じだと思いました。

大西さんにも跡継ぎさんはいらっしゃいません。このままですと確実に風化する段階まで来ています。


ただ帰りの車で小杉さんが以下のように仰っていましたが、


必要だから残り、不必要だから無くなるのは自然なこと。ただそれが選択の舞台に乗らないまま、有ったことも知られずに無くなっていくのは残念に思う。だから見て触れて、感じて欲しいと思う。まだ作る人がいる今、この瞬間に。 なぜその人は作り続けてきたのかを。その場面作りが私、着物小売店の役割だと思う。


全くその通りだと思います。我々小売店がすべき事は、色々ありますが今こそ、売り方ではなく「物の情報を正しく伝える事」が大切になって来ています。ウィキペディアで調べればなんでも出てきますが、それと現実とはかけ離れている事が多いです。着物は歴史と文化の中で生まれてきましたが、作っているのは個人レベルの人です。現代のまさに今の現状を実際にお会いし目で見て、耳で聞いて感じた事をお伝えする事が私たちの使命のような気がしました。