浜松・注染(染めの技法)

4月に入り、イベントやら、ゆかたが大量に入荷したりしてバタバタしています(汗・・

そんな中で先週の月曜日に浜松へ仕入れも兼ねて注染(ちゅうせん)の見学へ行ってきました。

注染を使った商品の代表格といえば、皆さんがイメージしやすいものに、「日本てぬぐい」があります。
見分け方は、裏と表がしっかりと染め抜かれていて水彩画のような感じと言えばよろしいでしょうか?


さて、今回伺ったのは二橋染工所さんという浜松でも有名な染め元さんです。
社長さんみずから、親切丁寧にいろんな工程を教えて頂きました。
まずもってありがとうございました。



注染の工程で染める前の段階に糊置きという作業があります。


上記の画像見て頂くとわかるかと思いますが、型紙(かたがみ)といわれる、型を白い反物の上に置き、ヘラで取った特殊な糊を一気に塗ります。
型紙はおおよそ1mほどで1つの模様が描かれています。
大体、1ロット4反分(二匹)を一度に糊置きしていきます。
1反が12mほどなので、48回折り返し、布を行ったり来たりさせて1つの型で糊置きしていきます。
すぐに折り返すので糊がお互いにくっついてしまうので、「おがくず」をふりかけながら次々と重ねていきます。
一番難しいとされるのは、折り返しの部分が少しでもずれると型継ぎが開いてしまい、柄が開いてしまって見た目が悪くなったりします。
スピーディーにリズムよく、糊置きする姿は熟練の職人さんしか出来ません。
ちなみにこの工場の糊置き職人さんは10代から住み込みで働いていらっしゃるという事です。




次はいよいよ注染のちゅうせんたる由縁「そそぐ染め」と書かれる工程に入ります。


糊置きされて折り返された48mの布を作業台の上に載せ、次は色を付ける部分の外側にさらに糊の縁(堰)を付けていきます。
なぜかというと、染料を一気に注ぐため、堰を作っておかないと染料がこぼれてしまって、いくら糊置きしているとは言え、仕上がりが悪くなるのです。
こちらも手作業で進められます。
糊の堰が出来上がると、作業台の下から圧力をかけ真空ポンプで引っ張ります。
引っ張っている間に染料をジョウロで堰の間に注いでいきます。
色によってジョウロの数が増えます。
注染の魅力のひとつ、暈しは、画像の様に2つのジョウロを片手でもち、濃い色から注ぎ、暈したい部分に薄い染料や色違いの染料を乾かないうちにすぐに注ぎます。
複雑で多色使いの商品は2人一組で、自分が担当する色を正確に素早く注いでいきます。
かなりの厚さの布を染めますので、染料を早く、しかも滲ませないようにするために染料を吸い取って行きます。
昔は鞴(ふいご)を足で踏みながら引っ張ったといいますのでもっと大変だったでしょうね・・


片面が終わると、今度は裏返して、まったく同様な作業をし、裏と表との差をなるべくなくすようにします。

そして、染め終わるとすぐに糊を落とす作業に移ります。
近くにある長い水槽に反物を入れ、機械にかけて糊を落としていきます。
そして、下記画像の様に天日に干して、染料を定着させ、今度は上記をかけ糊付けして仕上げをして出来上がりです。


この一連の作業を見ていると、ごく稀に出る染料飛びや型継ぎなどは本当に「当たり前」の事だと理解できます。

だって、機械でなく人間が染めているんですもの、それが味って思わないとねぇ〜。


画像の彼女(名前をお聞きするのを忘れちゃった><)はまだ本当に若くて、この仕事に興味を持って働いているということで、高齢化が進む注染業界にも一筋の光に見えました!是非頑張って下さいね!



上記画像は注染のゆかた。独特で魅力的ですよね〜。




そんな工程を社長さん(上記の画像)自ら、今抱えてる問題点やこれから先の事など、親切に話して頂きました。

一番頭を悩ましているのは、「ちょっとでも染めムラ」や「染め飛び」などがあると不良品という事で返されてしまう事だと仰っていました。
昔はそんないわゆるB反と呼ばれる物でも、需要があったのですが、今ではメーカーさんがその柄は2次使用できないように止めてしまうため、すべてロスになってしまうそうです。
また、昔より、環境問題がうるさくなったので、排水の浄化システムなどに設備投資をしないといけないため、さらに厳しいと仰ってました。


これを受け、熟練の職人さんでも出てしまうわずかなミスを完全なミスとするのか、しないのか。
そして、どの程度までが許されるのか、検品のシステムを作るのと同様に、この染めの性格や技術的な事を伝えるシステム作りが必要だと感じました。


あまりの感動に、私もオリジナルの注染で何か作ってみたくなりました(ロットが問題ですが・・汗・・)




そしてこちらは同工場内でもうひとつ、ローラー奈染の機械も動いていました。
注染と比べると、数倍のスピードで染めることが出来ます。
旅館の名入れゆかたや踊りの練習用、盆踊り用ゆかたなど枚数が必要で単価も安く出来るのが魅力ですね。




次にお邪魔したのは、一番初めの工程、「型紙」を彫っている職人さんにも会いたくなり急遽アポなしで伺っちゃいました。

なんと御歳は78歳と仰られ、(お顔からは想像できないほど若く見えますよね!)
今ではほとんど数人しか型紙を彫れる職人さんがいないこと、後継者を育てようにも、5年〜10年ほど修行が必要なこと、伊勢型などのようには賃金が貰えないことも原因だと仰ってました。


さみしい話ばかりになってしまいますが、これが今の現実。現場の声。


簡単に注染のゆかたは素敵ですよね〜


とは言わずに、

注染の魅力は全ての作業において手仕事という点。同じ物は出来そうで出来ないという点。最後は国内でないと出来ないという点。

この魅力をどうやってお客様にわかりやすく伝えるか、そしてこれからさらに新しい魅力的な柄を作っていけるかが焦点となりそうです。

型を彫る前の段階で、若いデザイナーさんが関わって頂くとおもしろい商品が出来そうな気がします。
しかし、今の値段より高くなりそうです。っていうか今の値段が現場を見ると合わないと思っちゃいます。
ここまで手間がかかるのに、ちょっとした奈染やインクジェット染めのブランドゆかたと同額か下手すると安いんですもんね。。



この記事を読んで頂いた、お着物好きな皆さんの一部の方でも、「今年は注染のゆかた見てみたい」って思って頂けると幸いです。