家紋の話

着物屋さんにとって、家紋は仕事上切っても切り離せない関係にあります。

現代の生活の中で、家紋という言葉はめっきり聞かなくなったと思いますが、今回はちょっと家紋についてお話を。

そもそも家紋とは「家柄」「家系」「地位」などを表す紋章として平安時代から始まったと言われています。
庶民の間に広まったのは江戸時代からと言われ、苗字の変わりのような使い方をしたとも聞いています。

前置きはさておき、現代で家紋を使われる場所は「生」と「死」そして「婚姻」に関係する場面での使用がほとんどです。


・赤ちゃん(特に男の子)のお宮参りの初着

・喪服(黒紋つき)

・黒留袖


いわゆる、始まりと終わり・または礼節を重んじる事柄には家紋を付けることにより、「家系」を意識していると想像できます。

さて、今回のメインのお話はお客様よりご質問が多い赤ちゃんの初着の件をご紹介したいと思います。

地域によっては風習が違うかもしれませんが、私のお店のある三河では赤ちゃんが生まれると、大抵、母方が着物を揃える風習があります。

女の子の場合は家紋を入れる事はしないのですが、その家系を継ぐ男の子の初着(お宮参りの着物)には家紋を付けます。(5ツ紋)

その際に結構問題になるのが「家紋」を父方のご実家に聞くということ。

先だってご紹介の様に、めったに家紋を使う事がないため、聞かれた方も困ってしまう事も。

代々続く本家(ほんや)さんは仏壇や家紋を家に飾ってあるお家も多いのですが、新家(あらや)さんともなると、本家に聞かなくては分からない場合もあります。

聞かれた本家さんでもお家を改修または建て替えをした時に仏壇などを簡素化してしまい家紋が入っている物自体がなくなっていることも。。

そこで、当店が確実に家紋を知る方法としてご提案している事は、ほとんどのお墓には家紋が彫ってある事が多いので「お子様が生まれたということもありますし、お墓参り(ご先祖にご報告)を兼ねて、ご覧になってきては?」とご提案しています。

ご実家が遠い場合には、難しいかもしれませんが、これも日本人として新しい命を授かりそのおかげで代々のご縁を知るという大切な行事の一つかもしれませんよね。

家紋入れには1週間か2週間ほどお時間が必要なため、できれば前もって調べておいて頂けると助かります。

皆さんもこの機会にぜひ、ご自分の家紋を調べてみてはいかがでしょうか?

不思議な事に、同じ姓が多くある地域の方々は「同じ家紋」が多い、また姓によっては全国的に同じ家紋が多いことも知られています。この家紋という日本独自の紋章は長い年月をかけ自分や家系のルーツを知るきっかけにも出来るかもしれませんね。

例えば、
加藤・佐藤さんなら「下がり藤」や「上がり藤」
渡辺さんなら「渡辺星」
杉浦さんなら「三本杉」

姓に比例する紋名も多いのです。