浜松注染でオリジナル着物を作りたい!

今年の4月に視察に行った以来、私の中でず〜っと思い描いていた、注染を使ったオリジナル着物が出来ないかと言う事。

ツイッターやキモノジャックなどで色々な方との出会いの中で、一気にこの話が現実的になってきました。


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今回、ご一緒させて頂いたのは、「berry工房」さんの渡辺さんと、イラストレーターの「くまたにたかし」さん。

また、もう一つの素敵な出会い、美術家の「志水堅二」さんとも創作注染着物を作ってみようと言うお話もありますが、そちらの話もいずれまた。


berry工房の渡辺実千奈さんはつい最近、名古屋の大須でお店をオープンさせたばかりの若い女性に大人気のショップの経営者さん。
ネットやクリエーターズマーケットなどで有名で是非その感性を当店とコラボ出来ないかとお話をして快く快諾して頂きました。
berry工房さんは着物メーカーを目指していると言う事もあり、創作意欲は素晴らしい物があります。

その渡辺さんが紹介して下さったのが「くまたにたかし」さん。
ホームページをご覧頂けるとわかるようにメルヘンチックに見えるけど正確な描写と何か訴えかけてくれるような絵が魅力的です。


そのお二人には是非、現場を見て頂き、デザイナーも注染の性格や制約、そして魅力的な部分を感じて頂き、デザインを起こし、
メーカーの感性でアドバイス、そして小売りの立場で値段設定や着物の専門的な柄合わせや売り方を吸い上げて頂く。


メーカー発注→デザイナー→染工場→売り手の流れを一環してやってみようと言う狙いもあります。


今の着物業界に私は必須だと思っている、川上の情報が正確に川下に流れ、川下の情報が川上に伝わり新しい物が出来る仕組み。
誰もやらないのなら、微力で小さな自分たちですがチャレンジしてみようという話になりました。
現実的には、まだどうなるかわかりませんが、この出会いをなんらかの形にして行きたいと思います。


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さて、そんな話の流れで、ついに工場視察になります。

前回のblogの内容を抜粋している部分もありますが、

この日記を見ている皆さん(お客様の立場)にもその過程をオープンにして、商品が出来上がるまでを正確にお伝え出来ると嬉しく思います。


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注染を使った商品の代表格といえば、皆さんがイメージしやすいものに、上記画像「日本てぬぐい」があります。

見分け方は、裏と表がしっかりと染め抜かれていて、ぼかしが水彩画のような感じと言えばよろしいでしょうか?



実際に伺った順番は違いますが、まずは注染を染めるために必要な「型紙」を作成して下さる、型紙士と呼ばれる作家さんに挨拶に行きました。

なんと御歳は78歳と仰られ、(お顔からは想像できないほど若く見えますよね!)

今では浜松にほとんど数人しか型紙を彫れる職人さんがいないこと、後継者を育てようにも、5年〜10年ほど修行が必要なこと、伊勢型などのようには賃金が貰えないことも原因だと仰ってました。

さみしい話ばかりになってしまいますが、これが今の現実。現場の声。

ただし、最近は焼津シャツと呼ばれる、注染の手ぬぐいで作った鯉口シャツが人気だそうで、かなりの注文があるそうでかなり忙しいみたいです。



これは実際に使われている注染の型紙です。

渋紙(和紙に柿渋を塗った水に丈夫な紙)に原画に忠実に彫刻刀で彫ります。



切り抜いた模様を紗に漆を塗って張り合わせます。
正確に早く、熟練の技が必要です。


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型紙が出来るといよいよ染めの工程に入ります、

今回、3人で伺ったのは前回同様、二橋染工所さんという浜松でも有名な染め元さんです。

社長さんみずから、親切丁寧にいろんな工程を教えて頂きました。





注染の工程で染める前の段階に糊置きという作業があります。

上記の画像見て頂くとわかるかと思いますが、先ほどの型紙を枠に張り、白い反物の上にセットして置き、ヘラで取った特殊な糊を一気に塗ります。

型紙はおおよそ1mほどで1つの模様が描かれています。

大体、1ロット4反分(二匹)を一度に糊置きしていきます。

1反が12mほどなので、48回折り返し、布を行ったり来たりさせて1つの型で糊置きしていきます。

すぐに折り返すので糊がお互いにくっついてしまうので、「おがくず」をふりかけながら次々と重ねていきます。

一番難しいとされるのは、折り返しの部分が少しでもずれると型継ぎが開いてしまい、柄が開いてしまって見た目が悪くなったりします。

スピーディーにリズムよく、糊置きする姿は熟練の職人さんしか出来ません。

ちなみにこの工場の糊置き職人さんは10代から住み込みで働いていらっしゃるという事です。


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次はいよいよ注染のちゅうせんたる由縁「そそぐ染め」と書かれる工程に入ります。

糊置きされて折り返された48mの布を作業台の上に載せ、次は色を付ける部分の外側にさらに糊の縁(堰)を付けていきます。

なぜかというと、染料を一気に注ぐため、堰を作っておかないと染料がこぼれてしまって、いくら糊置きしているとは言え、仕上がりが悪くなるのです。

こちらも手作業で進められます。



糊の堰が出来上がると、作業台の下から圧力をかけ真空ポンプで引っ張ります。

引っ張っている間に染料をジョウロで堰の間に注いでいきます。

色によってジョウロの数が増えます。

注染の魅力のひとつ、暈しは、画像の様に2つのジョウロを片手でもち、濃い色から注ぎ、暈したい部分に薄い染料や色違いの染料を乾かないうちにすぐに注ぎます。

複雑で多色使いの商品は2人一組で、自分が担当する色を正確に素早く注いでいきます。

かなりの厚さの布を染めますので、染料を早く、しかも滲ませないようにするために染料を吸い取って行きます。

昔は鞴(ふいご)を足で踏みながら引っ張ったといいますのでもっと大変だったでしょうね・・

片面が終わると、今度は裏返して、まったく同様な作業をし、裏と表との差をなるべくなくすようにします。



そして、染め終わるとすぐに糊を落とす作業に移ります。

近くにある長い水槽に反物を入れ、機械にかけて糊を落としていきます。

そして、下記画像の様に天日に干して、染料を定着させ、今度は上記をかけ糊付けして仕上げをして出来上がりです。

この一連の作業を見ていると、ごく稀に出る染料飛びや型継ぎなどは本当に「当たり前」の事だと理解できます。

だって、機械でなく人間が染めているんですもの、それが味って思わないとねぇ〜。

画像の彼女(名前をお聞きするのを忘れちゃった><)はまだ本当に若くて、この仕事に興味を持って働いているということで、高齢化が進む注染業界にも一筋の光に見えました!是非頑張って下さいね!

上記画像は注染のゆかた。独特で魅力的ですよね〜。

そんな工程を社長さん(上記の画像)自ら、今抱えてる問題点やこれから先の事など、親切に話して頂きました。

一番頭を悩ましているのは、「ちょっとでも染めムラ」や「染め飛び」などがあると不良品という事で返されてしまう事だと仰っていました。

昔はそんないわゆるB反と呼ばれる物でも、需要があったのですが、今ではメーカーさんがその柄は2次使用できないように止めてしまうため、すべてロスになってしまうそうです。

また、昔より、環境問題がうるさくなったので、排水の浄化システムなどに設備投資をしないといけないため、さらに厳しいと仰ってました。

これを受け、熟練の職人さんでも出てしまうわずかなミスを完全なミスとするのか、しないのか。

そして、どの程度までが許されるのか、検品のシステムを作るのと同様に、この染めの性格や技術的な事を伝えるシステム作りが必要だと感じました。

それらをすべて理解し、消費者に伝え魅力的なデザインで作るオリジナル商品。。
3人で帰り際に熱く語りあいました。
う〜んその会話、録音しておけば良かったなぁ〜。


デザイナー「くまたに」さんも真剣に聞き入っていました。
注染を生かした、自分らしいデザイン。
頑張って下さい!!(応援しか出来ない><


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注染の魅力は全ての作業において手仕事という点。同じ物は出来そうで出来ないという点。最後は国内でないと出来ないという点。

この魅力をどうやってお客様にわかりやすく伝えるか、そしてこれからさらに新しい魅力的な柄を作っていけるかが焦点となりそうです。


しかし、今の値段より高くなりそうです。っていうか今の値段が現場を見ると合わないと思っちゃいます。

ここまで手間がかかるのに、ちょっとした奈染やインクジェット染めのブランドゆかたと同額か下手すると安いんですもんね。。


この記事を読んで頂いた、お着物好きな皆さんの一部の方でも、「注染のオリジナル着物見てみたい」って思って頂けると幸いです。

この先も進展があったら、こちらのblogでお知らせしていきますね!