きものお仕立て事情

今日は着物のお仕立て事情についてお話しようと思います。
なぜかというと今日本の仕立て屋さんがピンチなのであります。
何がピンチかといいますと。。
現在の着物の仕立てはかなり海外仕立て(中国など)が多くなってきています。

あ、初めに言っておきますが、私が海外仕立てを完全に否定しているわけではありません。
しかしこの先の日本の文化を考えたとき「ちょっと待って」と思うようになって来たので。。

話は戻って
業界話では大手呉服屋さんのほとんどが利用しているとの事で
仕立てシェアは50%以上もしくは70%ほどは海外で縫っていると思われます。
当初の考えではお客様の為に加工代が安く済むほうが良いって事ではじめたのだと思います。
私が修行時代から聞いていましたので、もう10年以上前からあったのですが
初めは日本の文化着物は特殊なものですので、仕立てのクオリティーも低く、雑な仕立てでしたので安かろう悪かろうではお客様が納得しませんでした。
しかし今では素人目にはほとんどわからないどころか一部の日本の仕立て屋さんより上手じゃないかな?と思われるほど仕立てのクオリティーも上がってきています。
しかも価格は3分の1ほどの値段で…
そりゃあ大手の呉服屋さんは飛びつきますよねw
「訪問着お仕立て上がりで¥58,000」「振袖フルセットで¥148,000」
なんてチラシやDMを見られた方も見えるのではないでしょうか?
初めて見た私の印象は「出来るわけが無い!損してるのか?」でしたが
なるほど海外仕立てに出し、裏地も物を落とせば出来ないことも無いw

でもよく熟慮して考えてみますと、今までお世話になった仕立て屋さんはどうなるの?
仕事を持って行かなくなったら?他の呉服屋さんの仕事を探せばいいんじゃない?
じゃあ海外並みの値段で縫ってもらえば?
う〜む。。なんかおかしい。。
日本の文化着物の始まりは、どこの家庭でもおばあちゃんが縫ってもらった着物を着て出かけた思い出が。。
みたいにもっと身近であったはずですよね。
もちろん私のお店ではお客様のためには加工の工賃が安いに越したことはありませんので
お店と仕立て屋さん、お互いが努力をして値段を下げることはしています。
しかし、「海外並みの値段で縫って」とは口が裂けても言えません。

私のお店の着物を縫ってくださっているある若い仕立て屋さんのお話を聞いて「こりゃいかん!」と思いました。
「大手の呉服屋さんに1枚¥20,000円で振袖を縫ってくれって言われたとき、こりゃパートに出たほうが楽してお金をもらえるかも」って言われたとき。。
仕立ての仕事というのは地味な仕事に見えますが本当に根気が必要で他の事は何も考えず、座って何時間も同じ姿勢で縫う仕事です。
たとえば振袖が1日6時間縫って4日で出来上がる仕事だとします。
時給¥1200で¥28,000の仕事ですが、¥20,000ですと約自給¥800の仕事になります。
本当であれば大工さんのように職人さんの仕事なのですから比べれないはずですが、
わかりやすく言わせて頂いています。

実際、この手の話でどんどん和裁士が減っていると業界からも聞いています。

で何が言いたいというと
もしこの先、地元の仕立て屋さんがいないと。。。
「特殊な直しはもちろん裄や袖丈直し・お仕立て直し」
といったことが直し物は早急にいる場合が多いので海外では対応出来ないはずです。
「いつも同じ仕立て屋さん」
しっくりくる仕立てというのは着てみないとわからない物です。
一度気に入ったら「ず〜っと同じ仕立て屋さんでお願いしたい」といわれるお客様も多いです。
海外ではそれは無理ですよね。。

この2点が主な理由です。
お着物が好きになっていただければ頂くほど切っても切れない関係にあるのがお仕立てです。

海外仕立てが悪いのではなく、
値段だけでは無いってことをお客様へ伝えていく、そんな姿勢も今からは問われるのではないでしょうか?

もちろん私も良いものを出来るだけ安くしたい!その気持ちはありますので
お客様から提案されれば海外仕立てもお受けします!

自分でもこんなに長い文章になるとはおもいませんでしたが

この行き場の無い思いを提案したかっただけかもしれません。。

最後に・海外仕立てなのか国内仕立てなのか見分けるコツを一つ
着物をお買い上げする前に「出来上がりは何日後ですか」ってさりげなく聞いてみてください(繁忙期は除いて)
40日〜50日って言われるところはほとんど海外仕立てかも。。
急ぎは別途プラス代金って言われるところも。。